研究概要 |
本研究は量子通信と呼ばれる新しい通信技術の可能性を探求するものであり、1974年代よりYuen,Helstrom,広田を中心に勢力的に研究されてきた。 1980年代に玉川大グループによって提唱された光の新しい量子状態制御による高性能光通信方式が1990年以降、慶応大、玉川大、東京工大、山梨大グループによってさらに進展させられてきた。 当該の研究プロジェクトは本分野の新しい進展に向けて慶応義塾大学と玉川大学量子通信研究施設との共同研究として行なわれ、本文部省科学研究費助成をもとに量子通信の実現化に向けさらに以下の事項が明かにされた。 1.量子状態制御を行なうデバイスとして縮退パラメトリック増幅器,光双安定の動作特性を解析し,スクイズド光の生成と,広帯域に量子雑音を抑圧する条件を明らかにした. 2.量子状態を制御した光を送信した場合,伝送路における損失によりその量子状態制御の効果が薄れてしまう.そこで,エネルギー損失量に対する特性劣化の度合を明らかにした.その結果,標準量子限界を克服する通信システムを提案した. 3.減衰のある系において量子状態制御の効果をより大きく得る方式として広田(1988年)によって提唱されている受信側量子状態制御方式を実現する幾つかの量子状態制御装置を提案した.その結果,それらは送信側で量子状態を制御する場合よりも優れた性能を示すことを数値的に明らかにした. 4.受信側量子状態制御における量子状態変換過程を数学的に記述するために広田(1990年)によって提唱されている条件付ユニタリー過程の例を減衰過程について示した. 5.受信側量子状態制御通信においてシステムの性能を改善するためには信号量子状態間の内積の減少が必要である.そこでこの様な物理現象として非線形ビームスプリッタが内積を減少させる条件付ユニタリー過程であることを示した. 6.スクイズド光を通信や計測に用いる際に重要となる変調器を提案し,そのスペクトル変換を明らかにした.さらに最適な変調を明なう条件を明らかにした.
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