研究概要 |
本研究では、子音の開始から後続母音部分への移行区間(遷移区間)の動的変化を研究した.その際、より高い立場の波形再構成の理論から、ヒトの認識系の持つ一種曖昧な特徴を自然観則システムと呼ばれる波形の構造的モデルで音声信号をモデル化し,遷移区間での動的特徴を自然観測係数パタ-ンで解析した.さらに,これとは別に,従来のパラメ-タ(LPCやLPCケプストラム時系列を後続母音部分への移行を表す意図的な平面に射影し、その軌跡から子音遷移区間の音素毎の特徴分類も試みた。 自然観測係数パタ-ンとは,有限項数自然観則フィルタの自然観測係数を,(時間ー観測時定数ー自然観測係数)の空間上に展開したものである.自然観測係数パタ-ンにより,自然観測係数{W_1}の時間変化{W_1(t)}に加えて,観測時定数f_<ec>に関する変化{W_1(f_<ec>)}も探ることができた.摩擦音・破裂音を解析した結果,(a)音素の瞬時周波数構造に近い自然観測係数パタ-ンが得られ,{W_1(t)}により後続母音との境界は明確に判別できた;(b)後続母音は母音毎に異なる特徴的な{W_1(f_<ec>)}パタ-ンを示し、子音部分によらず判別が可能であった. 一方,後続母音部分への意図的平面を、“n次元のモデルパラメ-タを成分とするベクトルの時系列に対し、その動的変化が遷移区間での時間軸伸縮に無関係に後続音へ直線的に移行する軌跡となるような2次元平面"といった観点からの決定法を試みた。その結果,摩擦音の軌跡はほとんど直線となり,認識率も高かったが,他の子音には十分ではなかった. 以上の結果をふまえて,今後,他の音素に対する解析,さらに個人差等を検討し,パラメ-タと認識法との相性に関して研究を進める予定である.
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