研究概要 |
空調または冷暖房を行っている、気流の比較的静穏な室内における人体の対流熱放散が、どのように行われ、どのような条件がこれに影響するかを次のような方法で実験的に検討した。 1.微風速発生装置:室内に各種要因により生ずる気流と同じものを発生し,人体の対流熱放散の実験を行うために、平均流速0.8m/sまでで、乱れの強さを制御した気流の発生装置を作成した。立体の人体の全体にわたって水平方向の気流を当てるために、高さ1860mm,幅920mmの断面を上下方向に4等分し、それらの各部で独立に平均流速、乱れの強さ、基本周波数を調節できるようにした。乱れを生じさせる可動ウイングは任意の回転速度および回転角で往復運動を行う他、不規則な室内気流を近似するために、回転速度および角度をランダムに変化させることも出来る。 2.発熱人体モデル:標準的人体形状を9部位のアルミ鋳造外殻により形成し、各部位に電気ヒ-タ-を組み込んだサ-マルマネキンを本実験対象とした。 3.実験方法:実験は静穏空気中および0.2,0.3,0.4m/s気流を発生させて行った。気流を発生させた場合には、乱れの強さを20〜60%の範囲で数段階に変化させて実験した。 4.実験結果:マネキン表面に生じた熱流のうち、放射熱損失を除いた対流熱放散量を算出し、表面と空気の温度差から対流熱伝達率を求めた。静穏空気中では熱伝達率は足元で7.5W/m^2Kと最大値を示し、胸部では2〜4W/m^2Kであった。これに水平方向の強制対流が加わると、流速0.2〜0.3m/sでは足元の熱伝達率はやや増加した程度であったが、膝以上の部分では大きく増加し、6〜8W/m^2Kとなった。流速0.4m/sでは足元の熱伝達率も増加し、全体で10〜12W/m^2Kとなった。
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