研究概要 |
1 積層欠陥エネルギ-の大きく異なるいくつかの面心立方金属・合金(Al,Au,Cu,CuーGe)を変形し、完全転位もしくはショックレ-部分転位における陽電子寿命を、高分解能陽電子寿命測定と寿命スペクトルの成分解析によって精確に決定した。 2 得られた陽電子寿命値を転位の拡張の巾で整理し、次の事を見出した。積層次陥エネルギ-が大きく、完全転位が実質上拡張していない場合は、陽電子寿命値は単一原子空孔中の値にほぼ等しいのに対し、拡張の巾が一定値(【less than or equal】10A)を越えると陽電子寿命値は単一原子空孔中の値のほぼ60%にまで低下し、以後は拡張巾の増加に関わらずそ 3 上記の結果は、陽電子は従来考えられていた様に転位上のジョグ等に捕獲されるのではなく、線状の転位芯そのものに捕獲されることを明確に示している。 4 過剰空孔が形成する二次欠陥を利用し、フランク転位とステアロッド転位における陽電子寿命値を精確に決定した。先にもとめた完全転位およびショックレ-部分転位における陽電子寿命値を含めて、転位のバ-ガ-スベクトルの大きさで整理し、転位における陽電子寿命値は、転位のバ-ガ-スベクトルの大きさにほぼ比例する事を見出した。 5 規則合金の同様の手法を適用し、超格子転位においては陽電子寿命値は単一原子空孔中の値よりもさらに大きく、この場合も転位のバ-ガ-スベクトルの大きさにほぼ比例する事を見定した。 以上の研究成果は、これまで定説のなかった陽電子と転位との相互作用を明かにする一方、転位を含む各種結晶の陽電子消滅によるキャラクタリゼ-ションという新たな応用に突破口を開くものである。
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