研究概要 |
構造用ファインセラミックスの高温高圧水中での耐環境性およびその結果に基づく改質への指針を得ることを目的として,非酸化物系,酸化物系それぞれの代表的な構造用セラミックスである,1)窒化ケイ素セラミックス,2)ムライトセラミックス,のオ-トクレ-ブ中,300℃,8.6MPa下での腐食挙動を調べた.さらに,それらセラミックスの,3)腐食に伴う強度劣化の傾向についても調べた.本研究で得られた成果を以下に要約する. 1.窒化ケイ素セラミックスの腐食挙動:Y_2O_3ーAl_2O_3,MgO各助剤系の常圧焼結Si_3N_4の腐食は,SiO_2の溶出による減量と助剤酸化物を含む珪酸塩水和物の腐食層を形成する.腐食層除去後の基体表面にはピットが生成する孔食の腐食形態を示す.これらの腐食挙動から,Y_2O_3ーAl_2O_3助剤系の方がY_2O_3,Al_2O_3成分の溶出率が低いことによる保護膜効果のため,MgO助剤系よりも高耐食性を有することが明らかになった. 2.ムライトセラミックスの腐食挙動:ムライトセラミックスにおいてもSiO_2の溶出に伴う減量を示し,ベ-マイト(AlOOH)の腐食層を形成する.しかし,腐食の程度は,出発原料粉体の合成法に依存し,ゾルーゲル法粉体よりも,SiO_2とAl_2O_3成分の均質混合が達成し易い,アルコキシド法,共沈法粉体を用いた焼結体の方が高耐食性を示した.また,組成では,理論組成(72wt%Al_2O_3)よりもAl_2O_2過剰側の74wt%Al_2O_3組成で高耐食性となる結果を得た.これらの結果より,ムライトセラミックスでは,原料粉体合成法,組成および微細構造の制御による耐食性,特性の改質が可能であることを提示した. 3.腐食による強度劣化:腐食試験後の窒化ケイ素およびムライトセラミックスの曲げ強度は,いずれも腐食初期に初期強度の約2/3まで低下し,その後はほぼ一定となる傾向を示す結果が得られた.
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