研究概要 |
1.報告者らは,カチオン変換容量(CEC)が大きく,かつ膨潤性を有する点でユニ-クなフッ素四ケイ素雲母(TSM)において加熱により層間カチオン(ランタンなど)の固着(CECの低下)が起こることを初めて見出した。これにアルミニウム(Al)ポリカチオンを用いて層間の架橋操作を施すことにより得られるミクロ多孔体の酸触媒能は,固着を行なわないものに比べ数十倍と飛躍的に向上する。そこで固着カチオンとして遷移金属に着目し,遷移金属粘土の合成を試みた。(1)3価のクロム(Cr)ではCECの低下が大きく膨潤せず架橋体が得られない。2価のニッケル,銅では固着と同時に架橋体も形成する。カチオンサイズのより大きな2価のパラジウム(Pd),1価の銀では高表面積の明確な架橋体を形成することがわかった。特にPdの導入による脱水素能の付与は顕著であり,クメンの反応において76%の選択率でαーメチルスチレンが生成する。(2)ミクロ細孔内に固定されたPdの機能を生かすため,サイズの小さなシクロヘキセンと大きなシクロドデセンとの競争水素化反応に適用した。カ-ボン上に担持されたPd触媒と比べて,Pd固着架橋TSMではシクロドデセンの水素化速度がシクロヘキセンよりも大幅に抑制されるという形状選択性が発現することも見出した。設備備品のガスクロマトグラフとインテグレ-タはこれらの反応進行を追跡評価に必須な分析機器である。 2.TSMの層間にCrのポリカチオン架橋剤を導入することによっても遷移金属粘土を合成できる。得られたCr架橋TSMは,Al架橋TSMと比べてエチルベンゼンからスチレンを得る脱水素触媒として遥かに高性能であることを見出した。 3.非膨潤性のタルクにケイフッ化ナトリウムを反応させて得られるフッ素雲母においても,前述の層間カチオンの固着が起こることを新たに見出した。全ての実験には薬品の精秤のため備品である天びんを用いた。
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