研究概要 |
有機ホウ素ポリマ-は、新しいタイプの反応性高分子として興味深いものである。本研究では、ハロボレ-ション反応という、従来有機合成の分野では知られていたが、それを直接高分子合成に利用した例は報告されていない反応を用いて、新規の有機ホウ素ポリマ-の合成に成功した。 一例として、1,ク-オクタジインと三具化ホウ素との反応を行うと、対応する有機ホウ素ハライドのポリマ-がほぼ定量的に得られることがわかった。得られたポリマ-は空気に対して不安定であり分解するが、窒素雰囲気下では安定に取扱うことができ、再沈澱により精製単離することができた。ポリマ-の構造は、IR,UV, ^1Hー, ^<13>Cー ^<11>BーNMRなどにより同定することができ、また、生成ポリマ-の酸分解による検討から、この重付加反応は、主としてシス付加で起こっていることが明らかとなった。このような全く新しい高分子合成手法を新たにハロボレ-ション重合と名付けた。このハロボレ-ション重合には、ジアセチレンモノマ-として、脂肪族、芳香族の種々のジイン類を用いることができ、それぞれ対応するポリ(有機ホウ素ハライド)が、高収率、高分子量で合成できた。 この新規の重合法で得られたポリマ-は、新しいタイプの反応性高分子として利用することができる。例えば、アルコ-ルや水と反応させると、ポリマ-中のBーBr結合がBーO結合に置換されることが明らかとなった。また、モノアセチレンと反応させると、更にハロボレ-ション反応が起こり、アルケニル置換の有機ホウ素ポリマ-が生成した。これらの有機ホウ素ハライドのポリマ-は、従来あまり報告例のない高分子ルイス酸であると考えられ、それに基づく特性が期待できる。一例として、THFなどの環状エ-テルを開環させることができた。
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