研究概要 |
作物研究において植物単位概念の導入が筆者らによって提唱されるようになり,ダイズにおいてもその生態的特徴が飛躍的に理解されるようになった.本報告は,ダイズ花器を花房次位の概念からとらえて,課題に対する基礎的資料を得ることを目的とした.まず,花器の開花と脱落習性を検討した.開花から脱落まで日数は10日を境界として前後に大別でき,前者を落花,後者を落莢とした.落蕾・落花・落莢の割合はそれぞれ5,28,66%であった.遮光処理によって特に落花が顕著となった.開花は20日あまりの期間に集中したが,脱落は開花直後から成熟期まで長期に及んだ.花房次位別に検討すると,I期;低次位の落花期,II期;高次位の落花期,III期;高次位の落花を伴った低次位落莢期,IV期;高次位の落花および低次位落莢期,V期;低次位および高次位の落莢期,と推移することが明らかになった. つぎに,花房次位別の摘花処理を行い,花房次位間の相互関係を検討した.開花直後に低次位を摘花すると,高次位の開花数・結莢率・100粒重が増加して対照区の93%の子実重を得た.開花始め後2週間に低次位を摘花すると,高次位の開花数は増加せず,結莢率が極めて高くなり,対照区の82%の子種重を得た.いずれも高次位花器による補償作用を示すものといえる.高次位を摘花すると低次位の結莢率・子実重が増加し,高次位の欠如を低次位が補償する傾向が認められ,また低次位内での相互関係が強いことも示唆された. 以上のようにダイズの花房次位は子実収量を維持するための重要な機構であると思われ,各生育ステ-ジの個体の形態,特に花器着生相によってその収量成立過程を把握し生育診断を行うことが妥当であろう.なお,本報告では筆者らが開発した花器着生相の分析法を提唱し,関連文献デ-タベ-スの一部も紹介した.
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