研究概要 |
本研究の目的は,細胞キメラ利用によるワケギの育種の可能性を検討することである.ワケギ及びネギの細胞キメラ(4-2-2,2-4-4)及び倍数体(2倍体,4倍体)を植物材料とし,以下の事項について検討した.1)細胞当たりの仁の数による倍数性検定法,2)細胞キメラ体の増殖とキメラ性の安定性,3)気孔特性,4)生育特性,5)光合成特性. 1.ネギの細胞キメラ体及び倍数体では,ネギのL1及びL2の倍数性は,それぞれ孔辺細胞及び葉肉細胞当たりの仁の最大数で検定できた.ワケギのL1及びL2の倍数性も,それぞれ孔辺細胞及び葉肉細胞当たりの仁の最大数または最頻値によって決定できた. 2.コルヒチン処理当代のキメラ性は,圃場条件下での増殖時に激しく変化した.しかし,育成後3年を経過した4-2-2及び2-4-4のキメラ体は安定的であった.0.1〜1.0ppm BA+0.5ppm NAA添加の寒天培地で,キメラ性は大きく変化した.しかし,0〜0.125ppm BA添加培地で,キメラ性の変化はなかった. 3.4-2-2及び4倍体は,2倍体及び2-4-4より有意に低い気孔密度と大きい気孔を有していた.4倍体及び4-2-2の単位葉面積当たりの気孔面積は,2倍体及び2-4-4より大きかった. 4.秋季には2-4-4の収量が高く,冬季には4-2-2の収量が増加した. 5.圃場条件下で,4倍体及び4-2-2の気孔伝導度,蒸散速度及び光合成速度は,2倍体及び2-4-4より高くな高くなった. 以上の結果より,秋季における2-4-4の多収性は,高い耐乾性によるものであり,また冬季における4-2-2の多収性は,高い光合成能力によってもたらされたものと推察される.したがって,ワケギの育種は,細胞キメラを利用することによって促進するであろう.
|