研究概要 |
近年,著者はグリコシラ-ゼが本来の作用水解部位であるαーグルコシド結合を持たないDーグルカ-ル,Dーグルコオクトエニト-ルに作用し,水和反応を触媒する新規な作用能力を発見し,グリコシラ-ゼは基質のアノマ-を厳格には認識しないと言う新しい概念を導くに至った。したがって,もしアグリコンが酵素に立体障害をもたらさない程に充分小さければ,本来のαー型基質に作用する酵素はβー型基質にも作用し得るものと仮定し本研究を企図とた。得られた成果の概要を下記する。 1.Aspergillus oigerからαーグルコシダ-ゼを結晶状態に精製し,種々の基質に対する速度パラメ-タ-を算出し,基質特異性を厳密に評価した。同時に,サブサイト親和力を算出し,主として3つのサブサイトよりなることを明らかにした。 2.βーglucosyl fluorideを合成し,結晶Asp oiger αーグルコシダ-ゼを作用させたところ,Fの遊離を認め,一方グルコ-スはNMRによりαー型であることを確認した。このCーF切断反応はマルトトリオ-スによって阻害されることを明らかにした。 3.αーglucosyl fluorideの[^<1ー2>H],および[^<1ー3>H]と[6ー^<14>C]同位体置換体を合成し,グルコアミラ-ゼとグルコデキストラナ-ゼ反応のアイソト-プ効果を調べ,これらの反応はカルボニウムイオン中間体を形成するものであることを実証した。 4.Dーgalactal,Dーgalactoーoctenitolにガラクトシダ-ゼを作用させ,NMR解析したところ,水和反応が解析されることを認めた。 5.テンサイおよびコメ起源αーグルコシダ-ゼについてβーglucosyl fluoride作用能を調べ,これら酵素もβー型基質のCーF切断を解媒することを確認した。これら事実から,一般にグリコシラ-ゼは基質のアノマ-を厳格には選択しないと言う結論に達することができた。
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