研究概要 |
本研究は、非破壊多成分同時分析が可能な核磁気共鳴法の特性を利用して、生体機能調節物質を効率良く見出すことを目的とするものである。まず、数種の食品の未知成分の検索を行った。生姜、アルファルファ、アスパラガスなど各種の食品の熱水抽出物を調製し、FXー90QFTーNMRを用い、10φセル中で ^<13>CーNMRスペクトルを測定した。大量に含まれる成分はいずれも既知物質と判明したが、そのスペクトルはそれぞれ特徴的なもので、 ^<13>CーNMR分析が抽出物中の主成分を知る極めて効果的な手法であることが確認された。 次に、有効成分が必ずしも明確でない各種食酢をそのまな内部基準法を用いて ^<13>CーNMR測定に供した。各種食酢のスペクトルはその食酢の製造原料、製造方法を反映したものであり、大変興味深いものであった。中でもリンゴ酢のスペクトルには、従来の成分研究で明らかにされている物質では説明できない大きなシグナルを認め、このシグナルを指標にして単離したところ、1,3ープロパンジオ-ル、と2,3ーブタンジオ-ル(D:L=9:1の混合物)であることが明らかになった。これがリンゴ酢の主成分として含有されることを初めて明らかにした。 さらに、健康に良いとされ飲用されている「黒酢」に注目した。食酢の場合と同様にして、そのまま ^<13>CーNMR測定に供した結果、黒酢は大変特徴的なスペクトルを与えた。既知成分に帰属できない大きなシグナルを指標に分画を進め、この未知物質は2,3ーbutandiol(DL体、メソ体の混合物)であることが明かとなった。その含量0.2〜0.4%にものぼり、黒酢の主成分であることが明かとなった。2,3ーbutanediolの生理作用についての報告はなく、何らかの作用が見出されれば、本研究手法が本来保持している生命維持機構に作用する新しい生体機能調節物質を、食品から効率的に見出す新しい方法となるものと期待される。
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