研究概要 |
筆者らは、タラ魚肉の破壊強度がー100℃付辺で急変する異常現象をさきに発見した。本研究は魚肉以外の食品や水溶液モデルを用いて実験し、この異常現象の特質をより明らかにしようとするものである。本年度得られた成果は次の通りである。 1.(欠陥のない凍結試験片の作成方法) 無機塩等の水溶液を通常の方法により凍結すると試料円筒の中心部に細長い気泡が形成され、均一な試験片とならない。この防止を種々考案し、押出型パドルを用いて欠陥の無い均一試料を作成することに成功した。 2 (純水の氷の破壊強度) 純水の氷について圧縮破壊強度がー20℃からー196℃の温度範囲で20〜30MPaとほぼ一定値であること,つまり、純水の氷ではー100℃付辺で破壊強度が急変しないことがわかった。この結果、前述の魚肉の異常な性質は氷結晶単独のものではなく,水とタンパク質が共同して凍結状態の機械的強度に影響を及ぼすような構造を作っている可能性が強く示唆された。 3 (トウフの破壊強度) 動物性タンパク質系である魚肉において観測された異常現象が植物性タンパク質系でも発現するか否か調べる目的でトウフ(大豆タンパク質ゲル)を用いて圧縮破壊強度を測定した。その結果、水分含量90%の市販トウフではー100℃付辺で若干の異常が見られたが脱水して水分含量を減らすと異常は観測されなくなった。これより、破壊強度の異常がタンパク質単独の性質によるものでもなく、タンパク質と水の相互作用により生ずる特異的なものである可能性が高まった。
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