研究概要 |
本研究では豚、牛骨格筋・筋原細胞の培養系における筋形成(筋細胞への分化)の確立とその機序が詳細に検討された。その結果以下のことが明らかとなった。 1.豚、牛ミオブラストはCHD法とDC付着法を組合せることにより、純化でき、サイトカラシンBによって層培養から選択的に遊離させることで、さらに高率に調整することができた。 2.調整したミオブラストは細胞内CKーMM,ミオシンを細胞化学的に検討することにより、その染色性で同定され、さらに分化程度も明らかにされた。 3.豚、牛ミオブラストは10%FCS,1.5%SFE添加培地で最も良く増殖した。豚ミオブラストは継代が可能であり、ミオチュ-ブ形成が低かった。一方,牛ミオブラストはミオチュ-ブ形成が高く、継代を続けることが不可能であった。 4.豚筋原細胞よりクロ-ン化細胞株を樹立することができた。この細胞株は非筋細胞を含まないので、隔合前の筋原細胞(ミオブラストの分化、成熟)の分化を研究のに適していた。 5.筋原細胞の増殖、分化はSFEとFCSがともに必要であった。SFEはミオブラストの誘導分化にFCSは予定筋芽細胞の増殖の維持とミオブラストの分化に関与することが明らかとなった。SFEに含まれる増殖分化因子は組織特異性がなく、分子量30ー100kdの分画に存在することが判明した。 6.牛ミオブラストのin vitroでのミオチュ-ブ、筋細胞形成系を確立した。この一連の増殖、分化にはSFE,FCS,Ca^<++>が必要であった。 7.筋形成の大量培養を確立するためには細胞固定化担体の開発、融合促進因子検討等今後さらに究明することが必要である。 以上の様に、本研究では当初の目的をほぼ達成することができた。本研究で確立された培養法、筋管細胞形成法は筋肉の発生生物学的研究および医学的研究に応用が可能である。これら基礎的研究を積み重ねることにより、将来、筋形成システムが確立することが十分期待され、畜産学的貢献が可能になると考えられる。
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