研究概要 |
積雪地帯における牧柵雪害を解決するために耐雪型牧柵を開発し,その実用性を検討したところ,以下の結果を得た。1.牧柵に関する既往の研究を取りまとめ,耐雪型牧柵には放牧期間は家畜に対して十分な隔障機能があり,積雪期間には積雪の荷重を受けない構造条件が必要であることがわかった。有刺鉄線牧柵の設計上,柵外採食行動時の牛の有刺鉄線に及ぼす荷重は200kgf以上であると推定され,高張力鋼線を使用した牧柵を設計すべきであった。2.有刺鉄線牧柵と耐雪型牧柵をそれぞれ山地傾斜地および混牧林内に設置した。施工費は前者が637〜685円/m,後者が123〜414円/m,維持管理費は前者が13.9〜37.5円/m,後者が1.3〜7.1円/mであった。耐雪型牧柵は慣行型牧柵よりも施工費・維持管理費とも極めて低コストであることが判明した。3.牧柵の構造変化として,有刺鉄線牧柵では牧区のコーナー部の柵柱に傾倒・沈下および架線の弛みが多く生じた。耐雪型牧柵の高張力鋼線の張力低下は多くとも30%程度であるので,コーナー柱の構造が丈夫なものほど安定する。4.放牧試験から隔障機能の指標としての柵外採食距離を把握したところ,有刺鉄線牧柵が12.7cm,耐雪型牧柵(3段架線中地上高110cmの最上段に通電した)が13.8cm,簡易電気牧柵(地上高80cmの1段張り)が9.1cmであった。これらの柵外採食距離は,慣行型牧柵と耐雪牧柵との間には有意な差はなかったが,この両者と簡易電気牧柵との間には有意な差が認められ(P<0.05),電気牧柵の隔障機能が極めて高いことがわかった。5.管理が不十分になりがちな山地傾斜地などの牧場でも通用する新しい耐雪型牧柵を施工したが,これは有刺鉄線牧柵の機能を格段に改良した。
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