研究概要 |
造血巣は,哺乳類では一般に卵黄嚢→胎子肝→骨髄(一部脾臓または胸腺やリンパ節)と移動し,成熟動物の造血は主として骨髄やリンパ組織で終生行われる。このような造血巣の移動が何故みられるかについてラット胎仔肝における造血巣の変化を追うことによって解析を試みた。 この3年間の研究においておよそ以下のようなことを明らかに出来たと考えている。 1.ラット胎仔肝造血系細胞に特異的なモノクロナル抗体UB-12に反応する造血系細胞の数をラジオイムノアッセイで測定したところ造血巣の移動が胎仔肝から骨髄に移る様子が定量的に測定できた。 2.UB-12に反応する細胞を免疫組織化学的方法やflow cytofluorometryにて解析したところ胎令14〜16日をピークに急速に造血巣が増加し,やがて出生前の20日令ではほとんど散在性にした造血巣が存在しないことが観察出来た。 3.造血系の細胞が胎仔肝に棲みつき増殖する場を与えているのは未熟なタイプの肝実質細胞(hepatocyte)ではないかということが形態学的に(隣接しているなどの点から)示唆された。 4.未熟なタイプのhepatocyteを成熟ラットのhepatocyteと比較したところ,その光顕・電顕形態学的な差の他に,肝細胞膜表面抗原に対する各種モノクロナル抗体(HAM1〜8)に対する免疫組織化学,免疫電顕学的解析においても明白な発現の差が確認できた。 5.未熟なhepatocyteで,成熟ラットhepatocyteの表面に発現している膜抗原(HAM1〜8)を発現していないか,弱くしか発現していない細胞は,肝細胞に特有の極性(毛細胆管面,接触面,洞様毛細血管面)が少なく,そのような細胞が存在していることと,造血系細胞が増殖していることとの間にかかわりがあることが示唆された。
|