研究概要 |
1.栄養因子除去によって引き起こされる初期カスケ-ド過程の同定 我々は神経細胞死のモデルとしてPC12細胞を選び,細胞死のおこる条件について調べた。その結果PC12細胞を神経成長因子(NGF)処理して充分分化させるとNGF除去による細胞死が起こることが示された。PC12細胞と交感神経節細胞ではその細胞死のタイムコ-ス,感受性等に差異があり興味ある知見がえられた。例えばPC12の場合の細胞死はFGFで抑えられたが,交感神経節では抑えられなかった。これは両者は組識特異性の差と考えられた。PC12を使うことは生化学実験を行う上で非常な利点があると考えられる。NGFを除いた時に起こるカスケ-ドの同定として,cーfosプロトオンコジンの消長をノ-ザンブロットにより調べた。その結果NGF除去後,30分〜1時間でピ-クとなりその後全く活性化は見られなかった。このタイムコ-スはナイ-ブなPC12細胞にNGFを投与した時にみられるcーfosの活性化とよく似ており,NGF投与と除去の両方にcーfosが関与していることが示され,細胞の応答機構のシンメトリ-という概念を提唱した。現在cーfos,cーjumのセンス及びアンチセンスオリゴRNAを合成し,細胞死の機構にcーfos活性化がどう関与しているかを調べている。 2.シクロヘキシミドに抑えられるカスケ-ド過程の同定 NGF除去によるPC12細胞の細胞死はシクロヘキシミドで部分的に抑えられることが判った。このことからシクロヘキシミド^<(CX)>の関与するステップを同定することを目的に±CXの条件下でmRNAを単離し,λ6EMベクタ-を使いライブラリ-を作成し,その差のライブラリ-を作ることにより,カスケ-ドの産物を同定しようと試みている。現在ようやくライブラリ-の作成にまで到達した。
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