研究概要 |
1.グルココルチコイド受容体の核結合を促進する因子(ASTP)はヒストンに強く結合する蛋白質で,グルココルチコイド受容体の核内アクセプター構成因子として働くと考えられている。このASTPの作用と一次構造を解析する為,抗ASTP抗体を作製し,ラット及びヒト肝のcDNAライブラリーから抗ASTP抗体でスクリーニングを行なった。得られたボジティブクローンをクローニングサイトの上流域および下流域のDNAプローブを用いてPCR法で増幅し,電気泳動で精製,回収の後,同じプローブを用いてダイレクトシークエンスを行なった。その結果,約2.4Kbpの全cDNA配列を解析出来た。その内open reading frame は約1.5Kbpであった。このcDNAをアミノ酸に翻訳すると予測されるアミノ酸配列は精製ASTPの限定分解により得られた8種類のアミノ酸配列を全て含んでいた。データーベースの検索を行なったが,この蛋白と相同性を持つものは見付からず,全く新しい蛋白質である事が分かった。現有,ASTPの発現ベクターを調製中です。 2.ASTPとグルココルチコイド受容体の生理作用を解明する為,抗ASTP抗体と同時に抗受容体抗体の作製した。これら抗体を用いて,ホルモン抵抗性癌細胞におけるグルココルチコイド受容体とASTP蛋白の変化をウエスタンブロッティング法で解析した。以前.ホルモン抵抗性癌細胞ではASTP活性が欠損している事を報告しているが,今回ホルモン抵抗性癌細胞では受容体蛋白には変化が認められないが,ASTP蛋白が欠損している事が分かった。従って,ASTPはグルココルチコイドホルモンの作用機構上必須の蛋白質で,癌細胞のホルモン抵抗性獲得にはASTPの欠損が大きく関与している事が考えられる。
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