研究概要 |
1.in vitroでのデメチルクロルテトラサイクリン(DMCT)先毒性反応惹起条件の確立:サトラサイクリン系薬物をはじめ種々薬物による光毒性反応の結果,様々の細胞障害がひき起こされる。従来,本反応の判定は、赤血球溶血現象をめやすとして行われてきたが、細胞障害のタ-ゲットとして細胞膜よりもむしろミトコンドリア(ミト)が重要視される。従って、ミトを欠く赤血球を用いての本反応の判定は適当ではない。我々は、分離ラット肝ミトを用いて、DMCT光毒性反応の惹起条件を報告した(Photochem.Photobiol,51,175ー183,1990)が、肝ミトを用いる事の是非を検討のため、他臓器のミトと比較検討し、肝ミトを用いた場合に最も低濃度のDMCTで本反応が惹起される事を見出した。即ち,(1)ラット骨格筋,(2)牛心臓,(3)ブタ睥,(4)牛副腎皮質,よりミトを分離し、LIVA照射条件一定(5.53×10^<ー2>Jcm^<ー2>)とした場合,DMCT濃度は,それぞれ,38.6μM,40.0μM,30.2μM,及び28.8μM,でミト酸化的リン酸化能の著明な障害とMg^<2+>ー活性化ATPaseの上昇が見られた。いずれもミトの膨化が電子顕微鏡により観察された。肝ミトでは21.5μMで本反応が惹起されること及びミト膨化が最も顕著であることから,本反応の判定には肝ミトを用いるべき推定された。 2.フェオホ-バイドa(PPa)光毒性反応惹起条件:前田ら(Photomed,Photobiol,6,7ー11,1984)の方法に従い照的装置を設置。PPa単独では肝ミトのstate4呼吸が40μMで軽度上昇を認めたのみであったが、PPa+照射5分ではPPa濃度5μMで完全な脱共役が見られた。即ちDMCT光毒性に比し、PPa光毒性反応は肝ミトに対しはるかに強力な障害作用を及ぼすことが判った。ミトを用いた本反応惹起条件と赤血球溶血作用の比較,本反応の細胞レベルでの検討を目下試みている。
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