研究概要 |
報告者は一例の悪性組織球症患者の末梢血より悪性組織球症細胞(MH細胞)と、これに親和性を示すhelper T cellを得た。後者はILー2存在下で前者を樹状細胞に分化させる液性因子を分泌することを発見し、これに樹状細胞分化因子(dendritic cell differntiation factor,DCDF)と名付けた。今回の研究ではこのDCDFの分離精製を行いcーDNAのクロ-ニングに必要な情報と材料の確保という基本的な成果が得られた。まず、DCDFの粗分画は培養上清を硫酸アンモニウム分画を行い、60〜70%飽和硫安沈澱分画を得、これを20mM TrisーHCI buffer,pH7.8に対して透析を行った。これをファルマシアFPLCシステムをもちいてカラムクロマトグラフィ-を行って精製した。まず、陰イオン交換クロマトグラフィ-としてMonoーQクロマトグラフィ-を行うと、活性分画は素通り分画に得られた。これを濃縮し、20mM TrisーHCI buffer,pH7.4に対して透析し、陽イオン交換クロマトグラフィ-としてMonoーSクロマトグラフィ-を行った。すると、活性分画は吸着分画として現れた。この分画をさらに濃縮し、ゲル漉過クロマトグラフィ-を行うと、活性分画は分子量約40kdの部分に現れた。これをSDSーPAGEを行うと、40kdのバンドのほかに数本の共雑蛋白のバンドがみられ、完全精製には至っていない。この部分精製DCDF標品を用いてDCDFの血液単球に対する作用を検討した。DCDFは血液単球に対して突起形成などの形態学的な樹伏化、HLAーDR抗原の発現を著明に強め、またCD1抗原の発現を誘導した。DCDFは完全精製には至っていないので、cーDNAクロ-ニングにまでは至っていない。
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