研究概要 |
近年,各種の癌に対して養子免疫療法が試みられているが,癌の種類によってその効果に差があり,肝癌に対しては,効果増強のための工夫が必要な状況にある。この目的に沿って,養子免疫療法の治療効果に影響を及ぼす因子として生体内の酸素濃度に注目し,末梢リンパ球の抗腫瘍活性に及ぼす酸素濃度の影響について検討した結果,以下の成績を得ている。1)生体内酸素濃度条件下(動脈血:5%,静脈血:2%)での,interleukin2(ILー2)によるリンパ球のLAK活性の誘導は,20%酸素濃度条件下に比べ明らかに低かった。一方,20%酸素濃度条件下でILー2刺激によって一旦高い活性を得たLAK細胞による腫瘍細胞に対する傷害性は,生体内酸素濃度条件下に移しても,その効果において変わよなかった。2)20%酸素濃度条件下で,ILー2によってリンパ球のLAK活性を誘導し,5日目にさらに20%酸素濃度下でILー2にて再刺激したリンパ球はその後,高いLAK活性を維持したのに対し,生体内酸素濃度条件下でILー2にて再激した場合にはLAK活性は急速に低下した。さらに,20%と50%酸素濃度条件下にてC3H/Heマウスを飼育し,LAK素子免疫療法を試みた。50%酸素濃度条件下にて肝癌細胞を移植したマウスにLAK養子免疫療法を行った群に有意な延命効果を認めた。20%酸素濃度条件下に比して50%酸素濃度条件下でのILー2によるマウスのLAK活性は約2倍ほどで高い値を示した。以上,本研究は養子免疫療法時に酸素療法を併用し,末梢組織中の酸素分圧を上げることによってリンパ球の抗腫瘍活性を高め養子免疫療法の効果を増強しうる可能性を強く示唆するものである。
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