研究概要 |
多数症例の自己免疫性肝炎(AIH)についてHLA抗原の検討を行うとともに、遺伝子レベルでの検討もおこなった。また、近年C型肝炎の診断法が確立した結果、従来のAIHの診断基準を満たした症例の中には、相当例の慢性C型肝炎ウイルス感染者が含まれていることが判明したために、血清中のHCV由来RNAをRTーPCR法により検出し、陽性例と陰性例の、免疫遺伝学的差異についても検討した。即ち、29例の慢性活動性肝炎患者でANAを含む1種以上の自己抗体が陽性かつ血清γグロブリン値が2.5g/dl以上の症例を、14例のHCVーRNA陰性、15例の陽性群に分類し、HCVーRNA陰性群をPーAIH群,陽性群をC型AIH群として各群でのHLAを検討した。その結果、PーAIH群ではHLAーDR4が全例にみられ、またDR4と連鎖するDQw4も9例に認められた。一方、HLAクラスI抗原では、以前の研究で有意差の認められたB35や他の研究で有意に増多していたとされるBW54に有意差はなく、C型肝炎に関係しないPーAIHでは、HLAクラスII抗原のDR4のみが、真にAIHの疾患感受性に関わっていることが確認された。一方C型AIHでは、15例中9例60%にDR4が認められたが、この陽性率は日本人のHLAーDR4保有率である40%と比較して有意の増加ではなかった。C型AIHにおいてはHLAーB35の保有率が健常人およびAIHの定義を満たさないC型肝炎患者のB35保有率よりも高いことが判明した。この結果は、免疫遺伝学的にはC型肝炎ウイルス保有者でAIHの定義を満たした群とそうでない群には差異のあることを示すものである。次に、PーAIH群のDR4遺伝子の分子生物学的検討では、検討しえた症例全てにDRβ遺伝子第2エクソンの第3hypervariable領域に、共通の荷電を有するアミノ酸配列がコ-ドされていることが確認された。
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