研究概要 |
血管新生は、炎症、固形腫瘍の増殖、虚血性心疾患における側副血行路の形成などに重要な役割を果たしている。近年、培養血管内皮細胞を用いた血管新生の研究が行われるようになったが、ヒトの内皮細胞による検討は少ない。本研究では、コラ-ゲンゲル上にヒト臍帯静脈内皮細胞を培養し、endothelial cell growth factor(ECGF)を加えて血管様構造物を形成させ、その定量化を試みた。また cAMP 誘導体や、adenylate cyclase のactivator である cholera toxin や forskolin の血管新生に及ぼす影響を検討した。 ECGFを加えて培養すると数時間後には内皮細胞は、spindle様の形態変化を生じ、コラ-ゲンゲル内に侵入した。24時間を経過すると、索状構造物を形成し、48時間後には、血管様構造物を形成した。この血管様構造物を位相差顕微鏡には観察、撮像し、planimeterにて計測した。電顕にて、この血管様構造物の横断面を観察すると、1個から数個の細胞で構成されるさまざまな大きさの血管腔類似の構造物が認められた。コラ-ゲンゲル上の内皮細胞のmonolayerから連続しているものもあれば、完全に離れているものも認められた。 ECGFは 10から 75μg/mlで濃度依存的に血管新生を促進したが、これ以上の濃度では、プラト-に達した。ECGFを加えないと血管様構造物は全く形成されなかった。dbcAMP(10^<ー4>,10^<ー3>M),8brcーAMP(10^<ー6>,10^<ー5>M)は ECGFの血管新生促進作用を有意に抑制した。Cholera toxin,forskolinには血管新生抑制作用は認められなかった。また、dbcGMPでは血管新生抑制作用は認められなかった。 以上より、血管新生に外因性 cyclic AMP が関与していることが示唆された。
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