研究概要 |
昨年度,ホルマリン固定標本からDNAを抽出後,PCR法を用いることによって,DNA中のHTLVーI遺伝子断片を証明する方法を確立した。 今年度は,この方法を用いることによって,皮膚腫瘍組織中のHTLVーIとhuman papillomavirus(HPV)についてその発現を検討した。 〈方法〉1)HTLVーI遺伝子の検索には,HTLVーI抗体検査ができなかった年代の皮膚リンパ腫組織,つまりATLの診断が不可能であった時代のホルマリン固定組織(菌状息肉者:3例,nonーHodgbinリンパ腫、6,Hodgbin病:1例)を対象とした。 2)HPVの検索には,ヒト皮膚腫瘍組織中でもHPVの発癌への関与が強く疑われている,bowenoid papulosis(1例),verrucous carcinoma(2例)のホルマリン固定組織を対象とした。 3)当科に保存してあるホルマリン固定標本から,10μm切片10枚を得,脱パラフィン後,フェノ-ル・クロロホルム法にてDNAを抽出。 4)それぞれのvirusに特異的とされる塩基配列領域のprimerを用いて,PCR法にて抽出DNAから増幅操作を行った。 〈結果〉1)10例の皮膚リンフォ-マ組織からは、1例のnonーltodgkinリンフォ-マ,1例のHodgkin病組織からHTLVーI特異的配列が増幅された。 2)HPV遺伝子の検索では,bowenoid papulosis,verrucous carcinoma全例でHPV16型遺伝子断片が増幅された。 以上の結果から,皮膚の発癌に関与する遺伝子の検討にもPCR法が有用であること,本邦における皮膚リンフォ-マにHTLVーIが,また高分化型有棘細胞癌にHPV16型が関与しやすいことも判明した。
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