研究概要 |
われわれは,ヌ-ドマウスにcancer cachexiaと類似した症状を呈するヒト癌細胞(SEKI)が産生するLPL阻害因子(MLPLI)を精製・同定し,本物質がMetcalf5が報告したLIFと同一物質であることを明らかにしてきた。今年度は,SEKI細胞をヌ-ドラットに移植し,担がん生体の代謝に及ぼす影響を検討した。 ヌ-ドラットにSEKI細胞を移植してもヌ-ドマウスに移植した時と同様,体重減少とcachexia様外観を呈した。移植6週後に血漿を分離すると対照群は淡黄色透明であったが移植群は白濁しており、脂質代謝異常を伺わせた。そこで,両群の血中脂質分画等について比較してみるとSEKI移植群ではTG,LDL,VLDL,Chylsmicron,TC,PLが5〜10倍対照群に比し増加しており,一方FFAは移植群で低値を示していた。一方,血糖もSEKI移植群で有意に低下しており,hypoglycemic,hyporlipidomicの状態を呈していた。Glyceroltri[1ー^<14>C]oleateを尾状脈よりラットに静注して,呼気中および各種臓器への取込みを検討すると,呼気中[^<14>CO_2]はSEKI移植群で有意に高値を示した。臓器への取込みは,脂肪組織では10分の1以下に低下し更に筋肉細胞への取込みも約半分に減少していた。一方,肺,肝への取込みには差が認められなかった。血漿中の放射活性は移植群で有意に高値を示した。各種臓器重量については,肝重量の増加が移植群でみられたが,筋肉,脂肪組織は移植群で重量は減少し,肺については両者間で有意の差は認められなかった。 以上,LIF産生がん細胞SEKIをヌ-ドラットに移植すると,移植された担がん生体の脂質代謝が大幅に正常個体と異っていた。
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