研究概要 |
我々は門脈圧亢進症例における門脈血行動熊を詳細に検討した結果,下部食道静脈瘤の血流パターンをすだれ型と棍棒型に大別できることを血管造影および解剖学的手法により明らかにし報告した。今回,胃食道静脈瘤の上記血流パターンのもつ臨床的意義を解明する目的で,臨床的症候,内視鏡所見,超音波カラードップラー検査,腹腔動脈造影および上腸間膜動脈造影,経皮経肝的門脈造影検査および非観血的静脈瘤内圧測定結果等を比較検討した結果,巨大棍棒型食道静脈瘤が硬化療法に治療抵抗性であり,胃上部血行郭清術と硬化療法との併用療法が有効であることが明かとなった。 次に,肝瘤合併例,脾機能亢進例,肝機能不良例,胃静脈瘤合併例など特殊な病態を有する症例において,各血行動態に応じた治療適応の決定,ことに経皮経肝的静脈瘤塞栓術と硬化療法の併用,PTA,TIPS,あるいは手術療法と硬化療法の併用など集学的治療法が必要であることがわかった。胃静脈瘤に関しては,独自の内視鏡分類を作成し,出血の予知が内視鏡的に可能であることが示唆された。現在,肝癌合併例,胃静脈瘤症例,予防的治療例については,Prospective randomized trialを施行中である。 以上より,胃食道静脈瘤の治療においては,胃及び食道静脈瘤の血流パターンを中心とした局所の門脈血行動態を把握することが治療方針を決定する上で最も重要であり,治療困難症例においては集学的治療の検討が必要であると考えられた。
|