研究概要 |
小腸粘膜に含まれる肝再生増殖因子を部分精製し、in vitroで肝細胞培養に添加し増殖効果について検討した。またin vivoで肝切除や小腸切除を行い、肝再生促進効果について検討した。(方法)1.小腸粘膜内の肝再生因子の部分精製:wistar系のラットの小腸粘膜を剥離し、ホモジネートを作り、超遠心、加熱処理を行い部分精製した。2.肝細胞培養:肝細胞は、Seglenらの方法に準じコラゲナーゼを用い分離し、williams培地で培養した。培養液に小腸粘膜因子を1mg/mlの濃度で添加し、1カ月後まで形態および機能(GOT,GPT)を測定した。3.肝切除実験:Higgins and Andersonに従い70%肝切除を行った。以下の3群に分け検討した。I)小腸粘膜因子投与群:肝切除と70%小腸切除を同時に行い、その後連日1週間部分精製した小腸粘膜因子(1mg)を腹腔内投与した。(n=7)II)生食投与群:肝切除と70%小腸切除を同時に行い、その後1週間連日生食(1ml)を腹腔内投与した。(n-6)III)肝切除単独群:肝切除のみを行った。(n=8)以上3群とも、手術後、8時間、1日、2日、一週間後に屠殺し抗BrdUモノクロナール抗体でS期細胞を同定し肝再生能を比較検討した。(結果)1)肝細胞培養実験:小腸粘膜因子を添加しない肝細胞は、約1週間で変性し培養の維持は困難であったが、添加したものでは、1カ月間も肝細胞は生着し培養上清中のGOT,GPTも検出され、機能も維持された。2)肝切除実験:S期細胞の標識率のピークは肝切除単独群で6時間から1日にあり、各々40.2±9.5%,53.1±10%であった。生食を投与した小腸切除を伴った肝切除群は、14.1±4.9%,19.5±7.1%と有意に肝再生は悪化した。それに対して小腸粘膜因子を投与した小腸切除を伴った肝切除群では、52.4±11.5%,62.4±5.9%に有意に肝再生は回復した。(結語)小腸粘膜因子は、in vitroの肝細胞培養肝細胞増殖作用を認め、またin vivoでは、小腸切除により低下した肝再生能を回復させた。
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