研究概要 |
末梢神経の自家移植を末梢神経および中枢神経に行ない,graft内の神経線維の再生過程を形熊学的に調ベた。雌Wistar ratを用い,座骨神経を顔面神経(末梢神経)に,腓骨神経を脊髄(中枢神経)に端々吻合して移植し,1〜24週後に電顕にて観察した。通常の超薄切片のほか,陽イオン染色と凍結割断法を施行し軸索およびこれを包むSchwann細胞とミエリン鞘を調べた。超薄切片では,全ての時期でWaller変性が認められた。4週以内のものでは,graft内にリンパ球やマクロファージの浸潤が強く認められた。末梢神経への移植では,10匹全例で4週以後次第にSchwann細胞と無髄線維が増生し,薄いミエリン鞘と短にinternodeが観察された。中枢神経への移植では,9匹中4匹でgraftが生着したが,ミエリン鞘と内髄線維が認められたのは2匹のみであった。そのミエリンは末梢型で,周囲にコラーゲンの増生を伴っていた。陽イオン染色では(末梢神経へのgraftで施行),電子密度の濃い部分が無髄線維の軸索の一部や有髄線維のミエリン鞘の間隙(おそらく後のRanvier絞輪)に,4週以後に観察された。凍結割断レプリカでは(末梢神経へのgraftで施行),有髄線維の軸索の一部に粒子が200/μm^2程度の密度で集積し,その約半分は直径10nm以上の粒子でナトリウムチャンネルと考えられた。無髄線維に接する細胞膜表面のpinocytosisの密度を計算し,血管の内皮細胞とも比較して同定した結果,ミエリン形成の有無を問わず,4週以後のgraft内の軸索に接するものはSchwann細胞が主体をなしていた。結論:末梢神経の自家移植片は,末梢神経のみならず中枢神経においても生着し,軸索とミエリン鞘が再生する。ミエリン形成の初期の段階で,ナトリウムチャンネルのinternode間への集積がおこる。再生した軸索周囲には,Schwann細胞がミエリン鞘の形成の有無に拘らず,間質を介さずに接している。
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