研究概要 |
上皮系細胞と間質系細胞が基底膜を介して接するという構造は実質臓器の基本的細胞構築であるが,その生理的意義は明かでない。この研究では卵胞壁を構成する顆粒膜細胞と莢膜細胞細胞の相互作用の生理適役割の解明を試みた。 まず,コラーゲン膜の両面に顆粒膜細胞と莢膜細胞を個別に培養し,両細胞が接するという生体の細胞環境をin vitroで再現した。このシステムを用いて細胞間相互作用の(1)細胞形態,細胞構築,ステロイドホルモン産生に及ぼす影響,(2)標的細胞のゴナドトロピンに対する反応への影響,(3)卵成熟への影響を観察した。 この結果,(1)両細胞間には互いの形態,構築,ホルモン産生能を調節に与る情報の交換が存在する,(2)顆粒膜細胞や莢膜細胞細胞の形態,ホルモン産生態,ゴナドトロピンに対する反応は両者が共培養されることにより生体の卵胞壁細胞のものに近づくことが判明した。また,(3)顆粒膜細胞の持つ卵成熟抑制能は莢膜細胞細胞からのシグナルにより増強されることが判明した。 即ち,両細胞間の相互作用は卵胞壁が本来の細胞構築と機能を維持するために不可欠の要素であると結論された。
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