研究概要 |
歯周炎はPorphyromoas gingivalisを代表とするいわゆる歯周病関連菌に対する歯周組織局所での免疫応答と一般に理解されているが、その進行あるいは治癒機構の詳細については未解明な部分が多い。最近、Hammondら(N.Eng.J.Med.,320,1306,1989)は好中球減少症患者に認められたアフタ性口内炎や重篤な歯肉炎が造血幹細胞の増殖因子の一つであるマクロファージ顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSF)の連続投与により著明な改善が認められたことを報告した。歯周炎の比較的初期段階では、上記外来因子に対する好中球の果たす役割(貧食)が重要と考えられている。このことは喫煙による好中球の機能低下と難治性歯周炎発症との密接な相関(MacFarlane et al.,J Periodontol 1992,908)からも伺える。これらの事実は好中球の機能や数を増加させることにより歯周病の発症や進行の抑制が計りうることを示唆している。本研究はマウスあるいはラットに実験的歯肉炎あるいは歯肉増殖症を惹起させ、GM-CSFがこれらにいかなる影響をあたえるかを追究しようとしたものである。マウスにGM-CSFを腹腔内に4週間投与し続けた場合、抹消血の赤血球に対する割合は対照群で白血球、リンパ球、好中球、単球および好酸球それぞれ、好照群では4.9、3.25、0.97、0.50および0.22であり、また、実験群では4.6、2.50、2.2、0.12および0であった。つまりGM-CSFにより好中球の割合が最も著明に上昇した。しかしながら、GM-CSFがこれらの歯周組織の病変に与える影響は認められなっかった。
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