研究概要 |
本研究の目的は、凍結保存された口腔粘膜由来細胞を用いて培養口腔粘膜を作成し、細胞提供動物以外の個体に移植し、同種培養人工粘膜の移植の可能性について検討することにある。そこでまず、自家細胞を用いた培養人工粘膜移植の生着過程について実験を行った。 実験動物(家兎)より口腔粘膜由来細胞を採取、培養し、培養人工粘膜を作成した。さらに同一動物に、作成した人工粘膜を移植し、その生着過程について検討を加えた。培養人工粘膜は、家兎人口腔粘膜由来線維芽細胞を1×10^6個を用い、7日間培養することによりコラ-ゲンゲルを収縮させて培養粘膜固有層を作成し、さらにそに上に上皮細胞を培養増殖させ作成した。移植母床としては、移植片の保護、観察が容易な家兎の背部を用い、移植後1,3,5,7,10,14,21,28日に摘出し、光顕的観察を行った。その結果、移植片への血管新生は、移植後3日目に下部結合組織より進入する小血管を認めたのを最初に、以後血管数は増加し、21日目には正常組織と同様と同様の血管網構築を示した。また上皮の形成は、移植直後より3日目までは移植片に対する栄養供給が低下するため、上皮層の壊死が起こったが、新生血管の進入にともなって残存上皮の増殖が再開し、上皮層の構築が成された。さらに21日目には上皮層直下にPAS陽性の基底膜様構造および上皮索様構造の形成を認めた。これらのことより、自家培養口腔粘膜移植では、通常の自家皮膚、粘膜移植とほぼ同様の生着過程を示すことが結果として得られた。
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