研究概要 |
受精直後から着床直前までの哺乳精卵の初期発育における,遺伝要因と環境要因の関与については,十分に解明されていない点が多い。そこで,5系統の近交系マウスから2細胞期の受精卵を採集し,人工培養条件下で胚盤胞後期までの72時間培養した。この期間の受精卵の生存率は,87%〜92%と高い値を示した。そしてこの生存率における遺伝要因の影響度は16%と低い値であった。以上の結果より,本実験における受精卵培養条件は比較的良好であり,またマウス受精卵の初期発育には非遺伝的要因がより大きな影響を与えていることが示唆された。 更に着床後のマウス受精卵の子宮内発育における,母親マウスの子宮内環境の影響について検索した。即ち,DDD系統の受精卵をDDD,C3H,C57BLおよびDBAの4系統のレシピエント雌マウスの子宮内に移植した。そして移植受精卵より発育した新生仔マウスの頭部を,頭部X線規格写真撮影装置により観察し,2次元画像分析装置を用いて分析したところ以下の結果を得た。 (1)受精卵移植技術は,移植受精卵の子宮内への着床および着床後の子宮内発影に影響を与える可能性が示唆された。 (2)新生仔マウスの頭蓋の大きさとリッターサイズの間には,負の相関があった。一方,頭蓋の大きさと妊娠期間の間には正の相関があった。 (3)4系統の雌マウスの胎仔マウスの成長への貢献度は一様ではなかった。 これらの結果より,移植受精卵の子宮内発育に対して,母親マウスの子宮内環境は重要な役割を果していることが解明された。
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