研究概要 |
我々はニュ-セラミックス系微粒子のクロマトグラフィ-への活用を数年来展開してきた結果,二酸化チタニウム(チタニア)ならびに二酸化ジルコニウム(ジルコニア)が従来の充填剤にない特異な吸着能を有することを見いだした。今年度は,チタニアとジルコニアをマトリックスとする高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)分離用化学結合型充填剤を開発することを目的として,まず無修飾状態におけるそれらの性状を精査した。化学結合型充填剤を用いる分離においては,化学結合基と共に所謂マトリクス効度が無視し得ないことが知られており,マトリクス効果の寄与が化学結合型を填剤の分離能の解析には不可欠なためである。このような観点からの研究で得られた主な成果は,次の2点である。 1)チタニア,ジルコニアは位置異性体を始めとする構造類似物質の識別能に優れ,それらの相互分離に有用である。例えば,アセトニトリルー水(95:5)を移動相としてジヒドロキシナフタレン異性体5種(1,4ー,1,5ー,1,6ー,1,7ー,2,7ー)のイソクラティック分離を試みた場合のキャパシティ-ファクタ-(k')は,シリカゲルカラムでは0.00〜0.03であるのに対し,チタニアカラムでは0.04〜9.66,ジルコニアカラムでは0.00〜5.09であった。チタニア,ジルコニアの優れた構造識別能はカフェイン,テオフィリン,テオブロミンなどのプリン誘導体についても示された。 2)チタニアは有機リン酸エステル類を特異的に保持し,それらの選択的な捕集,精製,相互分離に有用である。チタニアカラムは,カルボン酸,スルホン酸などを始めとして殆んどの生体関連物質が保持されない条件下,有機リン酸エステル類を保持することを見いだした。この知見は,有機リン酸エステル類の分離分析,精製のみならず,それらが関与する多くの領域の進歩に貢献するものと期待される。
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