研究課題/領域番号 |
02807201
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 京都産業大学 (1991) 京都大学 (1990) |
研究代表者 |
福井 成行 京都産業大学, 工学部, 助教授 (30218888)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1991年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1990年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | ムチン / モノクロ-ナル抗体 / シリアルTn抗原 / 結腸がん / ルイスA型活性糖鎖 / シアリルTn抗原 / 糖タンパク質 / 単クロ-ン抗体 / 癌 / 糖鎖抗原 |
研究概要 |
ヒト結腸癌関連糖鎖抗原であるムチン型糖タンパク質を認識するモノクロ-ナル抗体の一つであるMLS102と、正常結腸粘膜上皮細胞と結腸癌細胞ともに産生するムチン型糖タンパク質を認識するMLS103の二つの抗体を用いて、ムチン型糖鎖の癌性変異を明らかにした。 単クロ-ン抗体作製のための免疫原として使用した結腸癌細胞株LS180から、それぞれの抗体カラムを用いて抗原糖タンパク質を分離して、糖鎖構造とアミノ酸組成などの比較を行った。その結果、結腸癌関連糖鎖抗原のMLS102抗原分子上には、主要糖鎖として、ムチン型糖鎖の56%がMLと102の抗原決定基であるNeuAcα2→6GalNAcα1→Ser/Thr、すなわちSialylーTn抗原と、25%がTn抗原として知られるGalNAc α1→Ser/Thrであった。そして約20%の糖鎖が構造未同定として残されたが、それらの大半は比較的短い糖鎖であった。 一方、これまで不明とされていた単クロ-ン抗体MLS103の抗原決定基は、結腸ガン細胞から抽出した酸性糖指質のsialylーLe^a糖脂質であるシアリルラクトフコペンタオシルセラミドのアシアロ物に反応した。また、同様の結果が糖タンパク質の糖鎖についても確かめられ、MLS103の抗原決定基はムチン型糖鎖ではLe^a型糖鎖をもつ、Galβ1→3(Fucα1→4)GlcNAcβ1→Galβ1→3GalNAcaα1→Ser/Thrであることが判明した。また同時に得られた、単クロ-ン抗体MLS104はLe^a糖脂質にはMLS103と同程度の結合性を示し、その抗原決定基はLe^a型糖型であることが示されたが、分離したムチン型糖タンパク質であるMLS103抗原と結腸癌細胞から精製した糖ペプチドに対しては両抗体の反応性に違いが認められ、その原因が糖鎖還元末端のGalNAcの6位のシアル酸に由来することが推察された。 分離したMLS102抗原とMLS103抗原のムチン型糖鎖を陰イオン交換HPLCが比較したところ、MLS103抗原糖鎖にはMLS102抗原には存在しない糖鎖が認められ、その中にはセリンあるいはスレオニンに結合したGalβ1→3GalNAc糖鎖にシアル酸が一つあるいは二つもつ糖鎖のあることか判明した。また、MLS102抗原にはNeuAcα2→6GalNAcα→糖鎖より長い糖鎖ではMLS103抗原のそれに対応する糖鎖に比べて硫酸化の程度が高く、その原因が糖鎖に2つ硫酸基をもつ糖鎖含量の多いことに起因することを明らかにした。 また、結腸癌細胞株LS180をFITC標識MLS102とロ-ダミン標識MLS103による蛍光抗体二重色を行ったところ、両抗原の分布が異なり、細胞にはMLS103抗原を発現する細胞(約90%)、MLS102抗原を発現する細胞(約10%)、の他に両抗原を同時に発現する細胞、両抗原をもとに発現しないものなどが存在し、MLS102抗原の発現には細胞の増殖周期も関与するものと考えられた。 以上の事実から、結腸ガン細胞に発現されるMLS102抗原の糖鎖に認められた、SialyーTn抗原とTn抗原などに認められる糖鎖伸長不全現象の原因は、第一に糖鎖還元末端のGalNAcの3位にガラクト-スが転移できないこと、第二にMLS102抗原ではSialylーTn糖鎖より長い糖鎖に ^<35>S硫酸で代謝標識される糖鎖を認めたことから、ガラクト-スの転移の欠如とともに、硫酸基とシアル酸の付加も関与するものと考えられた。
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