研究概要 |
既存の血管より新らしい血管が形成される現象(血管新生)は、生理的のみならず病態下したとえば腫瘍の成長の過程)でもみられる生体適応反応の一つである。これまでこの機序について多くの報告がされてきたが、現在は一般的に既存血管の内皮細胞が増殖・管腔形成をおこなうことで新らたな血管が形成されると考えられている。しかしこのような機序に必ずしも適合しないデ-タも報告されておりまだ研究すべき課題は山積している。本研究は血管が形成される以前に細胞間隙にフィブリン網が形成される事に注目し、その意義を明らかにすべく創傷治癒過程の血管新生をモデルとして(家兎耳窓法),はじめられたものである。その結果、(i)血管が形成される以前にすでに血液は細胞間隙を循環している。そしてその流路の壁は主にフィブリンから形成されている。(ii)プラスミノ-ゲンアクチベ-タ-を連続的に細胞間隙に供給しておくと,血管の形成が完全に阻止された。以上の結果より,フィブリン網の形成は血管新生においては必須過程であることが明らかになった。又当初の目標を超えて血管が形成された時、管壁を形成する内皮細胞の由来について検討を加えた。すでに未成熟の管腔では線維芽細胞様細胞がみられたので,線維芽細胞の挙動に注目した。そこであらかじめ家兎耳介より線維芽細胞を分離・増殖させ,それらをindia inkでラベルしたのち新生血管の管壁にとりこまれるかどうかを検討した。その結果,新生血管にindia inkをとりこんだ内皮細胞を検出できた。これは線維芽細胞が血管内皮細胞に分化することを示唆している。以上,本研究によりこれまでとは異る血管新生機序を提起することができる結果を得ることができた。
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