研究概要 |
本研究期間中に61名の小児癌患者において、Fenwall社製CS3000血液成分分離器を用いて計215回のアフェレ-シスを行い末梢血幹細胞を採取したが、移植術に必要な3x10^5/kg(体重)以上のCFUーGMは30名(4%)でのみ採取可能であり、残る患者では安全なPBSCTを施行することが困難であった。本研究で実際に末梢血幹細胞移植術を施行した57例の難治性白血病・悪性リンパ腸小児患者の治療成績は、骨髄移植術に劣らないことも判明したため、本研究課題の重要性が改めて認識された。 末梢血幹細胞の増殖動態を解明するため、モノクロ-ナル抗体などを用いて幹細胞を純化しrecombinant cytokineと培養し、コロニ-形成に及ぼす影響を検討した。その結果末梢血幹細胞は骨髄細胞とは異なり、造血刺激因子としてinterleukinー3(ILー3)、GーCSFおよびinterferonーγー併用する必要があることをはじめて明らかにした。この知見に基づき、アフェレ-シス施行前に患者にrecombinant GーCSFを投与すると、採取される幹細胞数が約40倍にも増加することを見出した。つぎにその他のrecombinatnt cytokine(ILー6,interferonーα,β,ubenimex,cyclosporineーA,FK506,deoxyspergulin)存在下で幹細胞を培養し、その増殖刺激効果を検討した。またプラスチックフラスコやガス透過性ビニ-ルバッグを用いて、ILー3、ILー6あるいはinterferonーγと共に幹細胞を培養し、体外での幹細胞の増殖を試みた。しかし5%CO_2と5%O_2の至適条件下においても、満足すべき幹細胞増量効果は認められなかった。このため今後は、より生体内環境に近い培養条件の開発を目指すとともに、stem cell factorなどの新しい造血刺激因子をも用いて、更に研究を継続する予定である。
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