研究概要 |
1.芳香族化合物ビフェニル誘導体について,結晶構造解析と分子力学的計算の結果より次のことが明らかになった。ビフェニル誘導体の分子のうち共平面構造はD_<2h>対称をもち斜交に積み重なるフェニル基間で四重極ー四重極相互作用が有利になる場合と,平行に積み重なる幅広い芳香環の間でファンデルワ-ルス相互作用が有利になる場合とにとられ,非対称な置換基効果によりこれらの条件が満たされないときには共平面構造はとられず,分子は結晶中でも孤立分子として安定な配座に近い配座をとる。2,2^1ージヒドロキシ-1,1^1ービナフチルでは,ラセミ体でもR(+)体でも結晶中の分子は孤立分子として安定な配座に近い配座をとる。しかし,分子間の水素結合はラセミ体では2_1らせんのまわりに形成され,R(+)体では3_1らせんのまわりに形成される。この事実は現在計算により解析中である。 2.ケイヒ酸アミドの固相光二量体の結晶に単斜晶系のものの他に三斜晶系のものがあることを見いだした。両形の結晶中での水素結合様式は部分的に異なっているが,それらの結晶構造は水素結合の寄与を無視しても空間群を与えることにより計算により再現されることがわかった。 3.固相光反応性化合物ケイヒ酸の酸性カリウム塩の結晶構造を決定した。この結果はイオン結合を有する結晶への分子力学的方法の適用性の検討に用いる予定である。 以上の研究成果をふまえ,今後,さらに系統的に研究を進展させて行く予定である。
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