平成元年実施の生活時間・絵画調査を分析した結果、住居内部の空間把握は、1年生の場合創造的遊びの多少にかかわり、3年生では、勉強などの非創造的行為の影響が表れはじめ、5年生では遊びとの関連がなくなり、子どもの価値観や性格が表現に表れることが明らかとなった。本年度は前記成果に基づき、子どもの生活体験の中でもとりわけ遊びの質による影響が大きい事実に着目し(前年度調査対象校における調査困難のため計画変更)遊びと住空間把握の実態およびそれらの相互関連を明らかにすることを目的とし、盛岡市内公立小学校3年児童(計331名)を対象として調査を実施した。(住空間把握の発達過程を捉える上で最も意味深いと思われる3年生に調査対象児童を限定)結果は以下に要約される。(1)児童は空間の高さ把握と長さ把握に共通する独自の尺度を持つ。(2)体制的把握を超えた場合の平面的長さは高さより捉えにくい。(3)空間把握においては形の把握が長さや高さの把握に優先する。(4)空間の高さ把握は室内遊びにおける創造性との関連が認められる。(5)活動範囲が広く視野が拡がり体験的である自転車遊びは、地理的位置関係を含めた空間把握能力を促す遊びとして位置づけられる。(6)室内空間把握の正確度と遊びの型(遊びに関する因子分析に基づき活動度・活動範囲・遊び仲間によりパタ-ン化)との関連では、男子ではト-タル・バランス型、女子では活動度バランス型との関連が認められる。(7)遠近法的理解および地理的把握の正確度については、男子のみ遊び仲間中小限定型との関連が認められる。(8)内外部空間逆転識別の正確度については、男子において遊びの活動度の大きさとの関連が認められる。 以上の結果より、遊びが住空間把握に影響を与える事実が一部明らかになった。地理的把握能力などの獲得過程の明確化と高さ長さ把握の正確度を高める要因に関する検討を今後の課題としたい。
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