研究概要 |
(1)、「職人の科学」という言葉に象徴される「学問の伝統と職人の伝統の結合」という事態は、17世紀ヨ-ロッパのみに出現した、言わば人類史的なできごとであったと言えよう。そのように問題を大きなスタンスで見た場合にどのような説明が可能かを、自然と人間のかかわりという広い視野で分析してみた(「環境と人間活動の関連史」)。そのように広くとらえてみてはじめて、経験主義、知識の実用的役割、機械論等の価値観が、イギリスのみでなく、広く西ヨ-ロッパ全体に出現した理由が明らかになると考えている。 (2)18世紀以降「職人の科学」がなぜイギリスのみで引きつがれたか、という問題がある(「産業革命の時代の科学のあゆみ」)。この理由を探求しているが、その理由は、17世紀半ば頃の科学の実験技術の自立、及び、それをもっぱらイギリスが支えたという点にある。18世紀のイギリスの一般的な技術水準がそれ程他国をリ-ドしていた。精密な科学実験装置には高度な金属加工技術が求められ,その中心をなす歯車製作機械については、資料を入手し、現在営為検付中である。職人の中心は実験装置製造職人、時計職人であったが,それを取り囲む多くの職業があり、彼らの活動、所属する宗派、職業等のリストの完成をめざしている。 (3)、それにもかかわらず、18世紀のイギリスにおいて、そうした自然発生的な勢いは、少くともイングランドにおいては制度的には支援されなかったという点を検討した.オックスフォ-ド・ケンブリッジ大学の権成主義的な様相がどのような歴史的背景によるものか、歴史学の論文により検討した。
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