研究概要 |
我が国のスポーツの特性をその原点に立ち返えり,歴史学的・社会学的視点から考察を試みることを目的として,制度化過程に焦点を当て,日本的スポーツの生成・変容過程,その社会文化的特質の解明を中心に検討を行なった。主要な分析内容と結果は下記の通りである。 1.社会学のT・パーソンズ,P・ブルデュー,そしてA・ギデンズらの理論を前提に,従来のスポーツ論にはみられない漸新な分析枠組を構成し,スポーツ文化の制度化過程の分析の立脚点とした。他方,E・ホブズボウムの「創られた伝統」という視点から,スポーツの制度化過程の再検討の基準を明示した。 2.日本的スポーツ,特に相摸・柔道・剣道・弓道等について,その制度化過程を比較分析したが,各々の過程は細部においては異なるとはいえ,競技性,教育性,さらに大衆性あるいは階級性などが,各々の特質及び相違をもたらしている主要な要因であることが確認された。 3.日本的スポーツと他の日本的文化,さらには日本の近代化過程の関わりについて考察した。結果として,日本的スポーツと日本的文化は密接に関連し,制度化過程は極めて類似していること,またそれらの制度化過程は我が国の近代化・現代化過程の産物であることが示唆された。 4.その他,日本的スポーツの文化的諸要素の相互連関関係,あるいは日本的スポーツと西欧スポーツの制度化過程に関する比較分析を試み,貴重な成果を得ることができた。 5.これらの結果を踏まえ,報告者を作成したが,経費的理由による紙幅の制限のため,内容は,相摸・柔道・剣道の制度化過程の分析にとどめた。残された内容については,今後遂次,論文として発表の予定である。
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