研究概要 |
平成2〜3年度に得られた研究成果を以下に示す。 [1]:ウサキ好中球PLDは、NーformylーMetーLeuーPhe(fMLP),ロイコトリエンB_4および血小板活性化因子により活性化された。これらの走化性因子は酵素放出反応も促進し、エタノ-ルを反応液中に添加してPLDによるホスファチジン酸の産生を抑制すると酵素放出反応も抑制されたが、後者の抑制率は前者よりも低かった。以上の結果は、好中球の酵素放出反応にPLD活性化が少なくとも部分的に関与することを示唆する。[2]:fMLPによるウサギ好中球PLDの活性化は、プロテインキナ-ゼC(PKC)阻害剤のスタウロスポリン(ST)やHー7前処理によりさらに増大した。PKC活性化剤のホルボ-ルエステル(PMA)であらかじめPKCを活性化させておくと、fMLP,NaFおよびイオノマイシンによるPLD活性化は顕著に抑制され、STによる前処理で回復した。以上の結果より、ウサギ好中球においてはPKCはむしろ抑制的にPLDを制御していると結論づけた。[3]:fMLPやイオノマイシンによるPLD活性化は、反応液中にCa^<2+>を添加した場合にのみ認められた。これらの刺激剤によるPLD活性化は、カルモジュリン(CaM)阻害剤のWー7やミオシン軽鎖キナ-ゼ(MLCK)阻害剤のMLー7により著明に抑制された。これらの結果より、fMLP刺激により細胞内へ流入したCa^<2+>がCaM/MLCKを活性化し、この経路を介してPLDは活性化される可能性が示唆される。[4]:ラットやウサギ脳膜画分のPLDは、0.1ー0.2% Triton Xー100により顕著に活性化され、0.5ー1% Triton Xー100で可溶化されることが判明した。このことは、Triton Xー100は脳膜画分PLDの精製に非常に有用であることを示す。そこで、Triton Xー100を用いてラット脳膜画分よりPLDの精製を試みたが、TritonXー100で可溶化したPLDは非常に不安定で、可溶化2ー3日後完全に消失した。今後は、PLDを安定な状態で精製することを検討する予定である。
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