研究概要 |
この研究は,(1)脳内で生成されるいくつかの内因性睡眠物質が,睡眠ー覚醒リズム(ウルトラディアリズムとして出現するが,サ-カディアンリズムの支配下にもある)の発現と維持にどのような役割を担っているか,それぞれの時異的なあるいは非特異的な作用は何か,さらにそれぞれはどのような相互関係にあるかなどについて検討し,(2)これらの活性物質それぞれが,脳内のどの局所的部位に作用し,どのような特異的あるいは非特異的な修飾作用を及ぼすかを解析し,(3)睡眠ー覚醒リズムの時系例が,どのような分子機構で調節されており,どのような生物学的役割を演じているかについて多角的に解析し,未知要素の多い睡眠覚醒機講に迫ろうとするものである。 (1)について 睡眠物質としてデルタ睡眠誘発ペプチド(DSIP)とその関連化合物,プロスタグランジンD2,ムラミルペプチド,睡眠促進物質(SPS)の有効成分(ウリジンおよび酸化型グルタチオンとこれらの関連化合物)など有力候補物質をとりあげた。このほか,高麗人参抽出物の睡眠促進作用についても同様に解析した。 (2)について 活動ー休息のサ-カディアンリズム調節に関わる視交叉上核,睡眠調節に関わる視床下部・視束前野の一部をリ-ジョンジェネレ-タ-によって局所的に破壊したラットがどのような睡眠ー覚醒リズムを示すかを数週間連続的に計測し,ついで睡眠物質(ウリジンおよびムラミルペプチド)の投与効果を正常ラットの場合と比較した。その結果、内側および外側視束前野は睡眠のサ-カディアンリズム形成に重要な役割をしていること,外側視束前野はウリジンによるノンレム睡眠促進効果発現には必須であるが,レム睡眠促進には関与しないことがわかった。 (3)について 以上の結果を統合して理論的な考察を行い,5編の総説を出版した。
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