研究概要 |
血清中のカイロン社のHCV抗体価の高値を与えたHCV肝炎肝癌患者で肝部分切除により試料を得た3例を出発材料としてRNAを抽出精製した。これらの試料でOligoーdT及びランダムプラマ-によるcDNAクロ-ニングを試みたが成功せず,PCR法による部分クロ-ニングを行った。RNAを鋳型とした1次プライマ-によるRーPCRの後、2次プライマ-によるPCRを行なう、RーPCR,double PCR法を行なった。プライマ-はカイロン社の報告に基づく10セット以上のプライマ-を用いたがPositiveな結果は2セットのみであった.PCRで強いバンドを得た配列をプライマ-として、再びcDNAクロ-ニングを試みたが長いcDNAを得ることは成功しなかった。 最も強いPCRバンドを与えた試料を用いて既知のHCV配列に基づくプライマ-によるPCRクロ-ニングを繰り返し、HCVサブゲノムのクロ-ニングを行った。同一試料による独立した3個のクロ-ンを単離し、それらの塩基配列を決定する方法でPCRによる変異の影響を排除した。現在3'端の一部を除き全てクロ-ンを得て、その配列を決定した。 その結果、1)非構造遺伝子領域の多くの患者試料の塩基配列決定の結果は、カイロン社の報告と約20%以上変異のあるグル-プが日本では高率に検出され、これらのクロ-ン間の変異率は5%以下で近接していた。従って日本ではカイロン社の型(アメリカ型)とは異なるサブグル-プの存在が示唆された(Kaneko et al.,Lancet,1990及びKaneko et al.,in printing,1991)。2)構造遺伝子領域及び5'非遺伝子領域は非構造遺伝子領域に比べ変異率は低く特にEnvの領域でVariable region以外は配列の保存性は高い(Honda et al,in preparation)。今後サブゲノムの接続によって全ゲノムサイズのクロ-ンの作成と各遺伝子部分の癒合遺伝子産物の大腸菌での発現と精製を基にこれらの部分に対する抗体の作成を計画している。
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