研究課題/領域番号 |
02F00010
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
笠谷 和比古 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授
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研究分担者 |
GUAN Wenna 国際日本文化研究センター, 研究部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2002年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 兄終弟及 / 摂政 / 礼制 / 家・国一体化 / 修身・斉家・平天下 / 昭穆制 / 陵墓制 / 尊号の一件 / 蔭位制 / 婿養子 / 功利主義 / 持参金養子 / 養子願書 / 養子証文 / 身分制 / 人間自身に関する契約 |
研究概要 |
平成15年度私は、日本古代社会における王位継承と血縁集団の構造、「禮」と「家・国一体化」及びその文化の特質、「皇考」をめぐる論争から見た皇権と親権及び平安時代の養子縁組と蔭位制などの研究を行って、それらの論文を発表した。また平成14年度の研究と及び京大で書いた博士論文を纏めて『日中親族構造の比較史的研究』というテーマで思文閣出版社に出されて学術出版助成金を申請している。 まず、日本古代国家の成立と律令制の完成期とみなされる六世紀から八世紀半ばにかけては、王位をめぐる争いが頻発した時期であると同時に王位の継承に関してもさまざまな特色を持つ、波乱に富んだ時代である。この時期、王位継承の最大の特徴は兄弟姉妹による継承である。一部の研究者はその姉妹を含んだ兄弟による継承を、直系継承制中の「中継」と考えていた。しかし筆者はその見解には賛成できない。以下、日本のこの時代の王位継承の実態、また中国古代の継承制における「兄終弟及」、直系継承およびそれを実行する条件、日本の女性継承などの問題について検討し、さらに日本古代社会における王位継承の特質を中心に血縁集団構造の分析もあわせて行いたい。 また、中国周時代の宗法分封制に基づいての「禮」及び「禮制」のもとで形成された「家・国一体化」と比べると、日本の古代社会における親族集団は、宗法血縁に基づく親族構造とは異なり、父・母の血統は未分化で、また混合一体化した無系的な親族構造を有している。このような親族集団構造の下では、人々の流動性が相対的に著しい。日本歴史における血縁親族集団の擬制的な親関係、特に養子研究の結果から見て、平安貴族たちが世代差を無視し、祖父が孫を養子にすることは極めて普遍的であり、中世、近世になれば非血縁の異姓養子はさらに多くなっている。だから日本は身分社会ではあっても、その身分は生来不動のものではなく、人為的に変えることができたといえる。それは明らかに中国の「礼制」に基づいた生まれつきの身分制、及び「修身、斉家、治国、平天下」という「家・国一体主義」の価値観と異なる。 最後に前漢の「皇考廟」・「恭王廟」、北宋の「濮議」と明の「大礼の議」における、傍系から即位した皇帝と前皇帝とのそれぞれの血縁関係の異同を考察し、対立する派の代表的な論説、論争の結果について検証する。さらに日本の太上天皇という尊号の問題との比較を試み、日中両文化の源流の相違にも言及するつもりである。また近年新たに発見された「郭店楚簡」を資料として用い、人の後(あとつぎ)たる者の「礼」についてさらには皇権と親権の実質について考察を行った。
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