研究概要 |
本年度は,柔軟指による物体の安定把持と軌道制御を実現する制御則を導くとともに,制御則を二自由度ハンドに実装し,その性能を実験的に評価した.柔軟指が有する動特性,物体から指に作用する反力,指を駆動するアクチュエータの動特性を含めて,二自由度ハンドのダイナミクスを導出し,そのダイナミクスをもとに制御則を導いた.安定把持と軌道制御のダイナミックシミュレーションをPC上で行い,制御則の有用性を検証した後で,実際の二自由度ハンドを用いて制御則の有効性を実験的に検証した. 柔軟指が有する動特性のモデリングにおいては,柔軟指を円柱形の集合とみなし,各円柱が対象物体と接触することにより生じる縮みと膨らみをモデリシグした.柔軟指を構成する材料のヤング率,ポワソン比,粘性率から,指全体が有する動特性を構成する.動特性の同定においては,柔軟指の下部にタクタイルセンサを敷き,柔軟指に変位を与えたときに現れる圧力分布を計測した.変位と圧力分布から,動特性を同定した.制御則の導出においては,柔軟指の変形と変形速度を考慮した制御則を導いた.柔軟指の変形と変形速度を考慮した項としてγ項を提案した.同定した指先の動特性を用いてシミュレーションを行い,物体の安定な把持とステップ軌道,正弦軌道,ランプ軌道に対する追従性を検証した.その結果,柔軟指の変形と変形速度を考慮して制御することで,より正確な軌道追従を実現できることが示された.また,二本の指の粘弾性特性やアクチュエータの動特性の違いに関わらず,安定把持と軌道追従が可能であることを実験的に示し,安定把持と軌道追従のパフォーマンスを定量的に示した.
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