研究概要 |
ジメチルスルフィドに代表されるチオール・スルフィド試薬は有機合成をする上で必要不可欠な試薬であるにも関わらず悪臭を有しており,環境との調和の視点から無臭の代替品の開発が望まれている。今年度は無臭スルフィドの開発とその応用を検討した。 1)無臭ドデシルメチルスルフィドの開発:先に筆者らは炭素数12のドデシルチオールが無臭であることを見出しており,これをもとに炭素長11〜16のアルキル基を有するメチルスルフィドの臭いを検討した。その結果,ウンデシルメチルスルフィドでは僅かな臭いを有していたが,ドデシルメチルスルフィドは無臭であることが判明した。そこで,ドデシルメチルスルフイドを悪臭チオールであるジメチルスルフィドの代わりに用いてCorey-Kim酸化,オゾニド処理,AlCl_3-スルフィド組合せ系による脱アルキル化を行なったところ,無臭代替品として有用であることが明らかとなった。また,ドデシルメチルスルホキサイドでSwern酸化を行なったところ,高収率,無臭で反応を完結できた。 2)回収容易な無臭メチル6-モルホリノヘキシルスルフィド(MMS)の開発:炭素長3〜6のモルホリノアルカンチオールを合成し,臭いを検討した結果,6-モルホリノヘキシルチオールが無臭であることを見出した。また,本チオールをメチル化して調製したMMSも同様に無臭であった。MMSはアミノ基を持つため,酸・塩基分配抽出で反応液から回収することができ,容易に再使用できる利点を持つスルフィドである。本スルフィドを用いてCorey-Kim酸化,オゾニド処理,AlCl_3-スルフィド組合せ系による脱アルキル化を行なったところ,高収率で反応が進行した。さらに,MMSも高い回収率で回収できた。また,メチル6-モルホリノヘキシルスルホキシド(MMSO)を用いてのSwern酸化も良好な結果を与えた。
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