研究概要 |
日本各地から収集したジェミニウイルス罹病スイカズラを試料とし,PCR法によりウイルスのゲノムDNAのクローニングを行うとともに,それぞれのクローンの塩基配列決定を行った。また,ウイルスDNAの増殖には必須ではないが,病徴発現に影響を与えるサテライトDNAと呼ばれる分子であるDNAβのPCRによる増幅,クローニングと塩基配列決定も合わせて行った。 1.スイカズラとタバコのbegomovirus検出用PCRプライマーの設計を行った。 2.福岡,神戸,大分および札幌産のスイカズラ試料からDNA AおよびDNA βを増幅し,それらのクローンを得た。 3.上記のウイルスのNicotiana benthamianaに対する機械的接種を試みた。 研究実施の結果,約2600bpのDNA-A断片を得,これをもとに完全長鎖を得るためのプライマーの設計を行った。また,神戸および札幌の試料から完全長DNA βのクローンを得,その塩基配列を決定した。感染スイカズラには黄色病徴示す試料があり,この病徴発現とDNA βの存在が関連している可能性が高く,今後の研究の進展によって明らかになることが期待される。 特記すべき成果として,本ウイルスの機械的接種の成功が挙げられる。すなわち,スイカズラ由来のウイルス株をタバコおよびN.benthamianaに塗沫接種を行ったところ,神戸株のN.benthamianaへの人工接種に成功し,接種植物にウイルスゲノムDNA AおよびDNA βが存在することをPCRによって確認した。これまで本ウイルスの人工接種の成功例はなく,高く評価される業績である。
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