研究概要 |
食料の安全性を確保するために,鶏卵のサルモネラ菌汚染を防止することは重要な課題である。このためには,生殖器の免疫機能を強化することが重要である。本研究ではニワトリの卵巣におけるサルモネラ菌感染を抑制するために,卵巣の免疫応答機能を追究し,14年度に卵巣のT細胞が菌の侵入に応答することを示した。本年度は、産卵鶏の腹腔内にSalmonella enteritidis(SE菌)を接種し,T細胞への抗原提示を行う主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIIの役割を検討した。その結果,サルモネラ菌の接種に伴い,菌は卵巣に侵入し,これに応答して、MHCクラスII分子を発現する細胞が増殖すること,またこの細胞と菌とは直接の接触を示さないので,菌が放出する成分を抗原因子としてT細胞に提示することを示唆した。また,卵巣組織とサルモネラ菌とを共培養すると,MHCクラスIIのmRNA発現が有意に増加することを示した。このことは,菌の接種に伴っておこるMHCクラスII分子を発現する細胞の増加は,卵巣組織を構築する細胞が,MHCクラスIIの遺伝子発現を増加するもので,血液を介して細胞が新たに卵巣内に流入するものではないことを示唆した。またこの細胞の一部は,卵胞膜を構築する線維芽細胞様の細胞であることを示した。これらの結果から,卵巣では,サルモネラ菌の侵入に伴って,この組織を構築する細胞がMHCクラスIIの遺伝子発現と同分子の産生を増加させることにより抗原提示機能を増強し,CD4T細胞に同菌に対する抗原提示を行うことが示された。
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