平成15年度には作業環境の整備、資料と文献の収集、データベースの作成および中国の研究機関と研究上の打ち合わせを行うと同時に、理論・計量モデルに基づく分析を進めている。詳しくは以下の通りである。 1.資料と文献の収集。 2.モデルと経済政策の分析 De Mello(1997)、Balassa(1978)とRamirez(2000)の理論を検討し、郷鎮企業に関するモデルを構築すると同時に、政府政策の郷鎮企業の発展に与えた影響を分析した。 3.研究結果の学会発表 平成15年11月29日、第二回日本経済政策学会国際会議で、研究結果を発表した。(Title : China's Accession to WTO and TVEs) これまでの研究成果は、以下の通りである。 (1)農産物加工産業は郷鎮企業でも重要な地位を占め、国際市場に強くリンクしている。 (2)WTO加盟は、競争激化をもたらす一方で、貿易自由化の恩恵を郷鎮企業にもたらした。 (3)WTO加盟は農産物に関する関税率を大幅に引き下げ、まだ、外国企業に国内流通、販売市場へ進出権を与えることで、外国商品の競争力を強めている。 (4)WTO加盟は、従来、農業の振興と農産物の輸出促進(外貨獲得と雇用拡大)を目的とした国内「補助金」が廃止されたことが、郷鎮企業の競争力低下につながった。 (5)WTO加盟により、特許制度が強化されたことが、外国の技術をまねている多数な中国の農産物加工企業に大きな衝撃をもたらし、新しい技術にかかる費用が中国企業に大きな負担となった結果、安い労働力のみが、郷鎮企業の国際競争力の源泉となっていること。 (6)政府は、WTO加盟が中国企業にもたらしている衝撃を解消、農産物加工企業を促進するために、新しい政策を打ち出した。その政策が原材料の『生産基地』の設立、技術向上、中堅企業の増強、融資、税金など政府の支援を中心とする。その政策が2005年まで、農産物加工産業に中国と先進国のギャップを大幅に縮小することをめざす。 (7)その政策は、中国の資源分配における郷鎮企業への差別を改善し、郷鎮企業の発展を促進している。 (8)De Mello(1997)、Balassa(1978)とRamirez(2000)の理論的枠組みを組み込みんだ実証研究では、FDIは、郷鎮企業の成長を促進するが、その効果は、東部において顕著に見られた。 今後の研究は、(1)WTO加盟が、郷鎮企業にもたらした政策変化とその郷鎮企業の成長への影響の分析 (2)FDIが、私営企業および集団企業の成長に与える効果の比較分析、FDIが郷鎮企業の生産性に与える効果の詳細な理論・実証分析などを引き続き行うなどを予定している。
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