研究概要 |
KEKBファクトリーでBelle実験がチャーモニウムの対生成と、1チャーモニウム生成包含反応でのエネルギー角度分布に関する興味深いデータを最近発表した。生成断面積は、非相対論的量子色力学によって計算が可能だが、実験データは過去の計算結果と大きく異なる。現在、及び将来のコライダー実験で、チャーモニウムやボトモニウムの生成と崩壊が、新しい物理のシグナルとなる可能性が高いので、その生成機構を理解することは重要である。我々は、KEKに於ける実験の成果を最大限生かすべく、関連する全てのチャーモニウム生成過程の計算を実施した。その結果Belle実験データは、チャームクォークフラグメンテーション過程の断面積が非相対論的量子色力学の最低次オーダーの予言の4倍程度で、且つ、グルオン対放出過程の断面積が並行グルオン領域で制限されることを考慮すると説明可能であることが示された。重要な発見であり、研究成果を論文として専門誌Physical Review Dに投稿した。 上記の研究過程で、チャーモニウムJ/ψとχ_0の対生成に関する実験データの角度分布が、非相対論的量子色力学の予言とは全く異なることが分かった。データ自体の問題である可能性が否定しきれないが、もしそうでなければ、このデータは、χ_0質量付近に、未知の新粒子が隠れている可能性を強く示唆している。我々は、スピンOパリティー正のグルーボールがχ_0とほぼ同じ質量を持つ可能性、さらにこの2素粒子が混合する可能性を検討し、生成角度分布を説明できることを発見した。研究成果を論文として専門誌Physics Letters Bに投稿した。 上記二投稿論文は、米国ロスアラモスの電子プリント庫(e-print archive)上で公開されている。 INCLUSIVE J/PSI PRODUCTIONS AT E+ E- COLLIDERS K.Hagiwara, E.Kou, Z.H.Lin, C.F.Qiao, G.H.Zhu e-Print Archive : hep-ph/0401246 SCALAR CHARMONIUM AND GLUEBALL MIXING IN E+ E- ---> J/PSI X S.Dulat, K.Hagiwara, Z.H.Lin e-Print Archive : hep-ph/0402230
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