研究概要 |
アニオンリビング重合法を用いて,鎖末端に2,4,8,16,32個のパーフルオロオクチル基を有するポリスチレンの合成を行った.アニオンリビング重合法を経由して得られた鎖末端にベンジルブロミド基を有するポリスチレンと,特別にデザインした1,1-ジフェニルエチレン誘導体から得られるアニオンとの反応を繰り返すことで,鎖末端に目的の数の水酸基を有するポリスチレン合成した.次に,ポリマー鎖末端の水酸基とC_8F_<17>COClとの反応をTHF中,室温,2時間,トリエチルアミン存在下において行った結果,SEC,^1H NMR,^<13>C NMR, IR測定により,得られたポリマーは設計通りの分子量ときわめて狭い分子量分布を有し,目的の数のパーフルオロオクチル基が定量的に導入されていることを確認した.従来,パーフルオロオクチル基の導入はNaH存在下,C_8F_<17>(CH_2)_3Brを用い40℃で数日間の反応が必要であったのに対し,本研究の手法は穏和な条件下で短時間に定量的な反応が進行することで優れている. 得られたポリマーはTHF溶液からカバーガラス上にスピンコート後,加熱処理し,X線光電子分光スペクトル(XPS),接触角測定による表面構造解析に用いた.ここで用いるポリマーは構造が厳密に制御されていることから,フィルム最表面の構造構築に置ける鎖末端のパーフルオロオクチル基の数依存性を議論するために最適のサンプルである.詳細に検討を行った結果,XPSよりフィルム最表面はわずか4個のパーフルオロアルキル基でほぼ覆われていることを見いだした.また,パーフルオロオクチル基の数が8,16と増すにつれて最表面のパーフルオロオクチル基の数がわずかずつ上昇するが,32個としても変化はなかった.もはやパーフルオロオクチル基の濃縮は飽和に達していることが確かめられた.同様の傾向は接触角測定からも支持された.水,ドデカンの接触角はフィルム最表面がはつ水性のみならず,はつ油性であることを示しており,この性質はパーフルオロオクチル基の数に依存していることが明らかとなった.
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